相続で争わないために、土地は分筆登記をしておく

税理士 平林夕佳

1筆の土地に子供たちの家を建てた場合、相続時に争いにならないように分筆をしておきましょう。

 

1筆の土地に家が何件か建っている

高度成長期の日本を支えた存在に、町工場があります。

質の良い製品を作るために、日本の町工場は経済成長に欠かせない存在でした。

しかし、円高不況が到来し、ものづくりの拠点が海外に移転し始めると、日本から町工場がだんだん減りました。

閉鎖された工場の跡地には、その土地の広さを生かしてアパートを建て、不動産賃貸業をされている方もいます。

広い土地の活用としては、その工場跡地に子供たちの家を建てたという方もいます。

一筆の土地に1件の家を建てるなら問題無いのですが、

一筆の土地が広く、家を何件か建てることができる場合があります。

図で書くと、以下のような場合です。

工場を経営していた甲が、工場を廃業した後、その空地に子丙と子丁が家を建てているケースです。

土地はあくまでも1筆の土地ですが、それぞれ所有者が異なる家が2軒建っている状態です。

この状態で甲に相続が発生した場合、土地Aはどこを境界にして子丙と子丁に分けることができるでしょうか。

1筆の土地は、分筆登記しないと分けることができない

不動産をお持ちの方の遺言書作成や、相続対策でお話を伺うと、

使っていない土地Aがあったから、その土地Aに子丙と子丁の家を建てている、

自分の相続が発生したら、子丙と子丁の家の間で土地を分けて相続させようと思う。

家が建ってるから、分けるの簡単でしょう?

という相談を受けることがあります。

私も税理士事務所で働く前は、1つの土地の単位をあらわず「筆」の意味など理解していなかったので、一般の方が

「相続の時に真ん中から土地を分けて、それぞれ相続させるように遺言書を書きたい。」

と考えるのも不思議ではありません。

以下の図のように、土地Aについて、子丙と子丁の家の間に線を引いて、2分の1ずつ土地Aを相続させればいいだろうと考えてしまいがちです。

しかし、土地は所有権を移転させるときに登記をしなくてはなりません。

土地Aの所有権登記は、1筆の土地Aについての所有者を登記しますので、

適当なところで線を引いて、それぞれ子丙と子丁に分けて相続させるということはできません。

土地Aについて、ケーキを切るように勝手に分けることはできないのです。

1筆の土地を分ける、分筆登記をする

では、土地は分けることはできないのかというと、そんなことはありません。

1筆の土地をケーキを切るように分けたいときは、「分筆」をします。

土地を分筆するには、測量をしてから分けるため、土地家屋調査士に依頼します。

分筆した後、一般的には分筆登記をするので、そこで「ケーキを切り分けることができた」、

つまり子丙と子丁の家が建っている土地ごとに、それぞれ分けることができた状態となります。

分筆登記をすると、新しい所在地番「土地B」が付されます。

甲さんの相続が開始する前に、1筆の土地Aを、土地Aと土地Bの2筆に分けておくと、相続で土地が分けやすくなります。

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