知らなかったではすまされない、連れ子相続の落とし穴

税理士 平林夕佳

去年、相続税申告の依頼を受けたAさんの体験談で、多くの人に知ってほしいと了承を得てブログに掲載します。
Aさんの相続関係説明図は以下のとおりです。

相続人ではない人に戸籍謄本はお渡しできません

去年、相続税申告を私にご依頼された方の奥様から実体験の話として伺った話です。
Aさんのような経験をする人が少しでも減ってほしいということで、本人から了解を得て書いてます。

概要は、同居していた祖母が亡くなり、Aさんは自宅の相続登記をするために役所へ戸籍謄本を取りに行きました。
すると役所の人から「あなたは相続人では無いので、亡くなった方の戸籍謄本はお渡しできません」と言われ、戸籍謄本を受取れなかったのです。

Aさんは何かの間違いだと思い、亡くなった祖母は父方の祖母にあたる人だから、孫の私と妹は相続人だということを主張しました。
Aさん姉妹のお父様の両親、つまりAさんの祖父母同士が再婚で、祖父の連れ子であるAさんの父親と、今回亡くなった父方の祖母が養子縁組をしていなかったため、
Aさんと妹は祖母の代襲相続人にはなれない、ということが役所からの説明でした。

Aさんと妹は、戸籍上は他人の祖母と暮らしていた

Aさんの祖父は、Aさんが生まれる前に亡くなっており、その後、両親を子供の頃に亡くしたため父方の祖母に育てられました。
父方の祖母は再婚前に生んだ娘がいましたが、前の夫と離婚後は疎遠になっていて、まったく連絡を取っていなかったようです。

Aさんが子どもの頃は祖母に世話になっていましたが、だんだんAさん姉妹が祖母の身の回りの世話をするようになり、
亡くなる数年前からは介護を妹と交代で担当していたということでした。戸籍上は本当の孫ではないのですが、本当の家族のように一緒に生活していたようです。
長年一緒に生活していたのに戸籍上家族ではなかったと知ったときは、相当なショックだったに違いありません。
さらに祖母が残した家の相続権が無いため、今住んでいる家を出なくてはならないということになりました。

Aさんは弁護士など法律の専門家に相談したようですが、父と祖母が養子縁組していなかったことでAさん姉妹に相続権は無く、どうにもならないという回答しか得られなかったようです。

とりあえず相続人である祖母の娘に連絡を取り、祖母が亡くなったことを伝えました。
事情を話して祖母と一緒に生活していた家は、贈与で祖母の娘からもらうことができたようです。
もちろん贈与税が発生し、申告・納税をしたということでした。

連れ子は再婚相手と養子縁組すれば、相続人になれる

今回のケースでは、Aさんと妹が生まれる前に父親が祖母と養子縁組しておけば、Aさんと妹は代襲相続で相続人になれました。
しかし、Aさんと妹が生まれた後に父と祖母が養子縁組をした場合だと、養子(父親)と養親(祖母)との親子関係ができる前からAさんと妹が存在したこととなります。
父親と祖母の親子関係ができる前に生まれた子は、祖母より先に父親が亡くなった場合、代襲相続の権利は無いので、
この場合は祖母はAさんと妹に遺言書を残しておけば遺贈による遺産の取得ができることになります。

 

★まとめ★
近年、結婚・離婚による家族の構成が昔より複雑になっています。
どちらかが再婚で、連れ子がいる場合は、いざという時に慌てないようにしましょう。

Follow me!