相続した賃貸不動産の確定申告1~減価償却費の計算と青色申告に注意する~

Bericht und Foto :税理士 平林夕佳 geschrieben.

昨年中に、賃貸不動産を相続して賃貸収入があったら、3月16日までに確定申告書の提出と、納税をする必要があります。(令和2年は3月15日が日曜日のため、3月16日が申告期限です。)

新橋駅前のSL広場。お正月気分が抜けていつもの仕事モードになっていました。

 

相続で賃貸不動産を取得した方

平成31年1月1日から令和1年12月31日までの間に相続で賃貸不動産を取得した方は、所得税の確定申告をする必要があります。

確定申告の所得の種類は、不動産所得です。仮にあなたがサラリーマン大家でしたら、会社から源泉徴収票を発行してもらい、給与所得と不動産所得を一緒に確定申告します。

所得税の青色申告承認申請書は提出しましたか?

確定申告の種類に、青色申告と白色申告の2種類の申告方法があります。

これまでは白色申告は帳簿を付けていない人(付けられない人)が白色申告で、帳簿を付けて領収書などを保存し、正しく申告している人が青色申告の届出をすることで青色申告できました。しかし、平成26年1月1日以降、白色申告も帳簿を付けることと、領収書などの書類の保存が義務化されました。

白色申告でも帳簿を付けて領収書を保存する必要があるのでしたら、その手間は青色申告と変わらないため、新しく不動産の確定申告する方も、事業開始届出書と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出するのが一般的になりました。

青色申告のメリット

青色申告承認申請書を提出すると、青色申告となります。青色申告のメリットは、

①赤字になったら、翌年以降3年間赤字を繰越すことができる(一定の要件があります)。
②30万円未満の固定資産に適用される、少額減価償却資産の特例が適用できる。
③不動産が「事業的規模」の場合、不動産所得から65万円をさらに控除できる(事業的規模でない場合、10万円の控除)。
④不動産が「事業的規模」の場合、青色事業専従者給与を支払える。

など、白色申告にはないメリットがあります。

賃貸不動産を相続した方は、青色申告承認申請書の提出期限に注意

被相続人(亡くなった方)が青色申告の承認を受けており、賃貸不動産を相続した方も引き続き青色申告をしたい場合、青色申告承認申請書の提出期限に注意してください。

相続で賃貸不動産を相続した場合、葬儀や法要、香典返しなどであっという間に2~3ヶ月が過ぎてしまいます。気付いたら青色申告承認申請書の提出期限が過ぎていたということがあるので注意しましょう。

提出期限は、被相続人が死亡した日によって変わります。

1. その死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合 → 死亡の日から4か月以内
2. その死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合 → その年の12月31日まで
3. その死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合 → その年の翌年の2月15日まで

なお、提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。

減価償却費の計算、月数按分のしかた

賃貸不動産には減価償却費の計算があります。減価償却費とは、時間の経過で価値が減少していく固定資産について、購入した年に支払額を経費に入れるのではなく、耐用年数にわたって毎年費用化する経費のことです。

減価償却費は日割りではなく、月割りで計算します。令和1年5月15日に30万円以上の備品を購入したのであれば、5月~12月までの8ヶ月分を減価償却費として計上します。

ここで、例えば令和1年9月20日に被相続人が亡くなった場合、減価償却費はどのように計算するのでしょうか?

被相続人は死亡した日から4ヶ月以内に「準確定申告」をしなくてはなりません。その際、減価償却費も死亡した日までを経費に入れることができます。しかし、減価償却費は月割りですから、上記の30万円以上の備品は5月から9月までの5ヶ月分の減価償却費を経費に計上します。

賃貸不動産を相続した相続人は、先ほどの30万円以上の備品の減価償却費については、何ヶ月分を経費に入れられるのでしょうか?
被相続人が亡くなった日が9月20日ですので、9月20日に備品を相続したと考えます。減価償却費は日割り計算しないので、9月から12月までの4ヶ月分を減価償却費として計上します。

このときの減価償却費の計算でよく見られる間違いは、被相続人が9月まで減価償却費を計上しているため、相続人は10月から12月までの3ヶ月分しか減価償却費を計上していないケースです。

相続があったときの減価償却費の月数は、相続開始の月を被相続人と相続人がそれぞれ含んで計算することに注意しましょう。

【追記】
相続した賃貸物件の確定申告については、
相続した賃貸不動産の確定申告2~家賃収入を申告する相続人は誰か、減価償却方法について~』(令和2年2月1日 投稿)
に追記しました。

★まとめ★
今回、不動産の青色申告と減価償却費の計上について記事を書くにあたり、いくつか記事を検索しました。
そうしたら、有名なクラウド会計の会社の記事で税法が間違って書かれていたり、読み方によっては間違って意味を解釈する表現がありました。

ネット上には誤った情報があふれていますので、国税庁のホームページなど信用できるサイトで確認しましょう。

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