土地の共有名義、メリット・デメリット(1)
税理士 平林夕佳
土地の共有持分について、デメリットをお伝えします。別記事に土地の共有持分のメリット・デメリット(2)を投稿してます。
港区にある桜田公園。緊急事態宣言が解除された最初の週末で、巣ごもりから羽を伸ばした人たちで賑わってました。
土地の共有名義とは
土地を共有名義で持つということは、1筆(いっぴつ)の土地の所有権を複数人で持つということです。ここで1筆の土地と書きましたが、登記簿上の1個の土地を1筆と数えます。土地を数える単位を筆で表します。
土地や建物は、「これは私が持っている土地(建物)です」と証明するために法務局に登記します。法務局へ行って、「全部事項証明書」を取れば、土地(や建物)の所有者がわかります。
土地の共有名義とは、法務局に登記されている「全部事項証明書」の「権利部(甲区)」の所有者が、複数人のときです。
法務省,『登記事項証明書(不動産登記)の様式変更について』より引用。
この場合、令和1年5月7日、法務五郎さんが土地を買って所有権が法務五郎さんになったことが全部事項証明書より読み取れます。親が亡くなって土地を相続した場合は、「売買」ではなく「相続」と書かれます。
法務五郎さんが奥様の法務花子さんと一緒に2人でお金を出し合って土地を買ったとすると、赤い四角で囲んだ部分に「共有」と書かれて、共有者の名前と出したお金の割合で計算された「持分割合」が記載されます。
相続で土地を共有で取得した場合は、遺産分割協議書で合意した持分割合にしたがって、共有者の名前と持分割合(権利の割合)が、全部事項証明書に記載されます。
土地の共有名義、デメリット
①土地を売りたいタイミングで、売れない。
「土地を売りたい」と思ったとき、土地が共有名義になっていると、全員が「土地を売る」と決めないと、土地を売りに出すことができません。土地の売買契約書に共有者全員の名前と印鑑を押さなくては売買契約が成立しません。
②共有者の世代が変わることで、所有者不明の土地になる。
税理士の立場からよく目にするのは、親の相続があったときに遺産分割の話し合いが進まず、兄弟で「とりあえず、共有にしておく」というものです。
遺産分割の話し合いがまとまらないのは、兄弟の仲が悪くて話し合いがまとまらないケースが多く見受けられます。仲が悪いため、いったん共有にすることで問題の解決を先送りします。
とりあえず土地を共有名義で相続登記したので解決したように見えますが、兄弟が2人とも亡くなり、その子がさらに相続したときに、いとこ同士で土地を共有する事態になります。
いとことなると、どこで何をしているのかわからない人が多いです。いとこがさらにその子に相続して…となると、所有者不明の土地となる可能性が高いです。
土地の共有名義、解決方法
土地の共有名義によるデメリットを解決する方法は、「土地を共有名義にしない」ことです。土地を買うときは、1人の名義で買いましょう。
【共有名義にしないための解決策】
①相続の遺産分割で話し合いがまとまらない場合、土地をもらう人、お金をもらう人に分ける。
②相続で親が持っていた土地は売却して、お金で分ける。
③相続で遺産が土地しかなかった場合、土地をもらった人が、お金を他の相続人に払う(代償金を払う)。
④相続で1筆の土地を複数の相続人で分ける場合、土地を分筆してから相続する。分筆とは、1筆で登記されている土地を2つ以上に分けて登記することです。
※ 私どもでは、土地家屋調査士(土地の分筆、合筆)、司法書士(不動産登記)、弁護士(相続で揉めた、賃貸トラブル)など、各法律の専門家と連携してサービスを提供しております。
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