書いててよかった贈与契約書
税理士 平林夕佳
親子、夫婦でも財産はそれぞれ個人に帰属します。個人間で贈与をするときは、贈与契約書を書きましょう。
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家族間でも贈与の対象となる
相続税の申告で、財産ではないのに申告の対象となるものがあります。それは、故人が相続人(受遺者)に対して、亡くなる3年以内に贈与した財産があれば、相続人の相続税課税価格に贈与額を加算します。生前贈与加算と言われるものです。
相続税の申告に生前贈与加算があるということも知られておりませんが、家族間での贈与はどういうときに申告が必要な贈与になるのか、判定が難しいのではないかと思う時があります。
原則は、親子間であっても金銭や物品、不動産の贈与があれば、贈与となります。
家族間であっても、贈与契約書を交わす
夫が働いて、妻や子の衣食住に充てたり、子どもの教育費に対しても贈与契約書を交わさなくてはいけないのか、というと、そうではありません。
・生計一親族
・生活費のための贈与
つまり、生計一親族に対する生活費の贈与は非課税です。そのため衣食住といった生活費や教育費を親が出す際に、子どもと贈与契約書を交わす必要はありません(ただし、仕送りの目的であっても、一度に大金を送金すると贈与税の対象となります)。
生活費や仕送りではない贈与をする時は、家族間であっても贈与契約書を交わしてから贈与をしましょう。
贈与の都度、贈与契約書を交わす
贈与契約書を交わさずに、親から子へ毎年100万円の贈与を5年間したとしましょう。
年間100万円の贈与ですから、贈与税の非課税の範囲内のため申告も納税も発生しません。
5年間では100万円×5年=500万円、親から子へ贈与されることになります。
暦年で見ると年間110万円以下の贈与ですから、贈与税はかからないように見えます。しかし、税の考え方は違います。
贈与契約書を贈与の都度交わさずに毎年同じ金額を贈与し続けると、最初に贈与した年に1回だけ贈与があり、後の年は未払いになっている贈与金の支払いと判定されてしまいます。つまり、この例題では
5年前に500万円の贈与契約があった
と判定されてしまいます。今回の例題では500万円の贈与があったと考えるため、贈与税の申告をしなくてはなりません。
では、毎年100万円を5年間に渡って贈与した場合はどうしたらいいのかというと、毎年贈与の都度、贈与契約書を書くことです。
まとめ
家族のお金は一家みんなのお金という考えは、税法上は通用しません。なぜなら所得税や贈与税など個人課税は世帯単位ではなく、個人単位で申告するからです。
親から子への贈与であっても、個人間の取引ですから、贈与をした都度、贈与契約書を交わして贈与しましょう。
贈与契約書が無いと、相続が開始したときなど過去に遡って検証するときに、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
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