日本の過剰なサービスは、お互いを不幸にする理由
税理士 平林夕佳
日本のサービス業に携わる方の接客は世界ではトップレベルだと思います。しかし、過剰なサービスはサービス業従事者と客の双方を不幸にしてしまいます。
青山一丁目駅ビル1階のヘレンドショップ。目の保養に。
日本の接客はサービスが過剰すぎる
土地を含んだ相続や贈与があった時、必ず管轄の区役所で土地の状況を調べて申告書を作成しています。
今回、土地の机上調査のため区役所の道路課に行きました。対応してくださった職員の方の丁寧なこと。
土地の調査で区役所の道路台帳や標準建築計画書などを調べますが、建築基準法に関して素人の私に対して、とても丁寧に対応していただきました。
今の役所や公的機関(税務署もそうですが)は、窓口で対応してくださる方は本当に丁寧だと感じます。
しかし、タダや大衆向けのサービスに対して丁寧な接客が当たり前になってしまうと、サービス業従事者も客もお互いにとって良くないのではないかと感じました。
欧米の大衆向けサービスは、接客が塩対応
ヨーロッパでの体験に限りますが、ヨーロッパ到着から日本に帰国する日まで毎日イライラすることが何度もありました
向こうの方の接客とは、客にとってのメリットよりも、一番効率的な方法を選んでいるように見えました。
Frankfurt空港で眉切りハサミをカバンに入れたまま空港カウンターでチェックインしてしまい、手荷物検査で「これ、捨てていい?」と、捨てられそうになったことがあります。
日本では刃物類は到着までコックピット預けで対応してくれますが、捨てた方が時間的に効率が良いのでしょう。私にとっての最善策を提案するのではなく、どうしたら効率的かを考えて対応しているように思いました。
眉切りハサミの件は、私がそれをとても大切にしていることを説明し、捨てずに済む方法を提案して通してもらいました。
しかし、一般的には国が違うのでそれぞれの習慣に従うしかありません。日本での「タダで丁寧に受けられるサービス」が当たり前になっていると、海外では常にイライラした状態になってしまいます。
過剰なサービスは、お互いが不幸になると日本人は気付き始めた
日本は「おもてなし」を掲げて、訪日外国人の増加を目指していましたが、最近、この過剰なサービスがサービス業従事者に負担を掛けているのでは?と日本人は気付き始めたようです。
タダもしくは大衆向けのサービスですら、一流の接客を要求し、気に入らなかった時には怒鳴る、長時間説教する、といった「カスタマーハラスメント」で鬱病を患うサービス業従事者がいます。
最近ですと、コロナ禍でスーパーの店員が「困った客」について、イラストで現状を訴えていました。この状態が続くと、辞めたい人が続出してスーパーが維持できないと。
スーパーが無くなってしまったら、客も困ってしまいます。
「おもてなし」「丁寧な接客」は、日本人として誇るべき文化だと心から思いますが、過剰なサービスはお互いが不幸になる結果になるのでは?と思います。
大衆向けの店や役所では、「いかに効率的に仕事がさばけるか」を優先し、最低限のやり取りをするのがお互いにとって最善なのではないでしょうか。日本人全員に向けられた課題だと思います。
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