「税務署は3年泳がせる。」飯田真弓著~アフィリエイト、せどりも見られてる~
税理士 平林夕佳
申告しなかったり、適当に申告したけど何も言われなかった。申告が認められたと思っても、「税務署は3年泳がせる。」のです。
前回(「税務署は見ている」飯田真弓著~税務調査の基礎知識~2019年12月30日投稿)に続き、飯田真弓氏の著書の書評です。
飯田真弓氏は税務署のOBで、国税調査官時代の貴重なお話を書かれています。
税理士会や支部の研修では、「税務調査の対象として浮上する会社は、こういう会社です」とか「税務調査でこういうところを見てます」という研修など絶対に無いでしょうから、本の内容はとても貴重な情報です。
今回ご紹介する著書「税務署は3年泳がせる。」も、税務署内部の暴露本というよりも「正しい申告をして、正しく納税しましょう」というメッセージが込められた本として、一般の人にも読みやすい本の構成になっています。
さて本のタイトルにもあるように「3年泳がせる」とはどういう意味でしょうか?申告に間違いがあったり、無申告の収入について、税務署がすぐに「間違っていますよ」とか「無申告の収入があるのではないか」と指摘するのではなく、その連絡は3年後にやってくるということです。税務調査は一般的に過去3年間の申告について税務調査が行われます。
マイナンバー導入で、税務調査に影響があるのか?
本の第一話のタイトルが「タマ選びもマイナンバーで大きく変わる」とあるように、マイナンバーが導入されたことで資料の突き合わせがやりやすくなるのではないかという点で、税務署側にメリットがあるようです。
税務調査のタマ選び(調査対象となる会社・個人の選定)について、タマ選びには3つのステップがあり、①机上調査、②外観調査、③内偵調査というステップを踏んで調査先の選定が行われるようです。
①机上調査
KSK(国税総合管理システム)とは、毎年の申告の内容のほか、調査官が集めた情報が集約された情報システムのことです。このKSKを使って調査先の選定を机上で行います。
②外観調査
実際に行って、外観を伺う調査です。
③内偵調査
お店などですと、実際に客を装って中に入って情報を収集します。
①机上調査で、どこからお金が入り、それがどこにあるのか、バラバラの資料を「名寄せ」するのにマイナンバーが役に立つのではないかということが書かれています。
マイナンバーの本格的な導入が平成28年1月で、本が出版されたのが2016年6月(平成28年6月)ですので、まだ「こうなるのではないか」という予想が記載されてます。
マイナンバーが本格的に導入されて3年経ったわけですが、確かに税務署に提出する支払調書や源泉徴収票にはマイナンバーの記載が義務付けられています。
マイナンバーを支払調書や源泉徴収票に記載することにより、支払いを受けた人が正しく申告しているか、調べやすくなったのではないかと察します。
アフィリエイト、せどりも3年泳がせる
実は3年前まで「アフィリエイト」とか「せどり」という職業を知りませんでした。3年前に独立開業する時に、友人のアフィリエイターから「アフィリエイトの申告が必要になったので、どうやって申告したらいいのか教えて欲しい。」という連絡を受けて初めて「アフィリエイト」という職業を知りました。
初めて聞いた職業だったので、アフィリエイトとせどりの勉強会に当時は出かけたことがありました。ちょうど確定申告時期だったので、勉強会の主催者が「経費になるもの、ならないもの」「売上は正しく申告」を徹底してお話されていたのをよく覚えています。
アフィリエイトという仕事を初めて聞いた方に簡単に説明すると、ブログなどで気に入った商品を紹介し、そのブログ内に貼ってあるリンクから商品を購入した人がいた場合、ブログの管理人にお金が入るという仕組みです。成功報酬型の広告業のようなイメージです。
一般の方がブログを始めるときにハンドルネームを使うので、匿名性が高く、申告しなくても税務署はわからないだろうと思ってしまいます。
アフィリエイターは、ASP(アフィリエイト サービス プロバイダ)を通して広告収入を受取ります。現段階で、ASPがアフィリエイターに支払う報酬について、ASPは支払調書を税務署へ提出する義務はありません(第2回 納税環境整備に関する専門家会合(2018年10月29日)[実2-1]説明資料(納税実務等を巡る近年の環境変化への対応について)(2/2) 18ページ)。
しかしここで「税務署にばれてないなら、申告しなくてもいい」とはならないでしょう。なぜかというと、ASPに税務調査が入った場合、過去3年間の売上や支払が税務調査官に見られてしまいます。過去3年間、誰に支払いをしたのかが税務署に把握されますので、支払先(アフィリエイター)が正しくアフィリエイト収入を申告していなかった場合、間接的に税務署にばれてしまうのです。
税務調査官は、ASPが報酬を支払ったアフィリエイターの情報も、KSKに入力しているかもしれません。
せどりは、古本屋などで安く入手した本をネットで仕入値より高い値段で売却して利益を得ます。
吉本康永氏のように、せどりで2年間で1,700万円も売上げてしまう人もいるのですから、単なるお小遣い稼ぎの域を超えてしまう人もいるのですね。
せどりも税務署の監視から逃れやすいと思われています。
しかし飯田真弓氏の本書では「せどらーも 3年間は 泳がされ」と書かれているように、税務署側で把握する方法があるのでしょう。
ブログやSNSも税務調査官にチェックされている
ここまでお読みになった方は、税務署に「丸はだか」になっていると薄々感じていらっしゃると思いますが、何と、「同窓会に参加!」のブログもチェックされているようです。
ネット社会でSNSが普及したことで、一般の方がプライベート旅行で行った先の写真や里帰りの写真、同窓会の写真もネットに上げるようになりました。税務調査官も、ネットをフルに活用してプライベートの様子もチェックしているようです。
★まとめ★
申告が間違っていたり、無申告の収入があっても税務署からすぐに連絡が来るとは限らないということがわかりました。
税務署としては正しい申告のやり直し(修正申告)を待っているのか、3年間泳がせているのかもしれません。
飯田真弓氏の著書「B勘あり!」は、ミステリー小説風で読み応えがあります。