遺言信託の契約では、契約書の読み合わせを忘れずに

税理士 平林夕佳

遺言信託の契約書に署名する前に、一緒に読み合わせして契約しましょう。
不明点をその場で質問することで、後のトラブルを防ぐためにも有効です。

 

 

丸の内1stビルから撮った一枚。再開発のお陰で、丸の内も買い物や食事を楽しめる街になりました。

 

親世代は契約書の内容はもちろん、契約書を交わしたこと自体も覚えていないことがある

顧問先様から、遺言信託を契約したが、内容がよくわからないから教えて欲しいと連絡がありました。

1.相続が発生したときに面倒な手続きをすることもなく財産を分けることができるのか。
2.信託銀行にはお金を払ってあるから、相続が発生しても追加で支払いはないのか。

といった質問でした。同じ質問を年に何件か受けています。

相続で面倒な手続きからも解放されるのだとしたら、遺言信託はなんて便利なのでしょう。しかし、相続が発生してから相続人が行う手続きは決まっており、

①相続人が公的書類を収集
②相続税申告書を作成
③不動産の登記をする

ことが、相続が発生したときの流れです。

ここで①~③まで、自分で動くか専門家に依頼することが相続の手続きになりますので、遺言信託の契約をしたからといって面倒な手続きから解放されるわけではありません。

信託銀行への報酬についても、信託銀行は遺言執行者として遺言の内容を正確に実現させることが仕事ですので、相続発生後に遺言執行者への報酬が発生します。
遺言執行者への報酬は、遺言信託の契約者と信託銀行との契約書に記載されているはずです。一般的には、100万円〜遺産総額の1%程度で請求する信託銀行が多いです。

相続が発生したら信託銀行が面倒な手続きの一切を代行してくれて、遺言執行報酬も前払いで支払うと聞いたことはありません。

そのため、顧問先様に契約内容を確認するように伝えると、「契約書というのは書いてないんですよ。」と、皆さんおっしゃるのです。

重要な契約では、必ず契約書を交わしているはず

ネットで無料会員のサービスを受けるときでさえ、「契約内容の確認」画面が出てきます。

無料会員サービスでさえ契約内容の確認画面が出てくるのですから、信託銀行と契約をするときは必ず契約書を交わしているはずです。

顧問先様から遺言信託に関する問い合わせで、「契約書にはどのように書いてあるのか」聞いてみると、たいていの場合、「契約書は交わしてないんです。」と言われてしまいます。
信託銀行という信用のある組織が個人と契約するのに「契約書を交わしていない」わけがありません。必ず契約書の内容を確認してから契約書に署名するようにしましょう。

契約書の読み合わせをして、不明点を解決してから契約書に署名する

遺言信託ですと、契約者は親世代の方が多いと思います。親世代というと、細かい文字を読むこともつらくなっている世代ですので、契約書を自分で読んで署名するのではなく、契約の相手方(この場合、信託銀行)と一緒に読み合わせをしてもらい、内容を理解してから契約するようにしましょう。

読み合わせをしている間で不明点があったら、その場で質問して解決します。

納得できない契約条項があったら、そのままにせず、いったん持ち帰って調べてから署名するのも良いと思います。

 

★まとめ★
契約書は文字が細かく、流し読みしてしまうこともあるので、内容を十分に理解していないことがあります。
内容を理解しないで契約をしてしまうと、後のトラブルに発展してしまうことがあります。

トラブルが発生したときに、契約当事者の両方に嫌な気持ちが残ってしまうので、契約書の読み合わせをして納得してから契約書の署名をするようにしましょう。

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