土地を早く相続登記した者勝ち?民法改正で税理士業務にも影響
税理士 平林夕佳
「民法改正と相続税務の確認」をテーマにした全国女性税理士連盟主催の秋の連続研修会、最終回に参加しました。
民法改正、弁護士や司法書士だけでなく税理士にも
平成30(2018)年、民法に改正が入りました。
税金以外の法律は弁護士と司法書士に任せておけばいい、という考えだと、思わぬ落とし穴にはまってしまいます。
11月21日に開催された研修会では、主に税理士業務に影響を与える民法改正について研修を受けました。
今回の研修会で特に衝撃的だった項目は
「相続させる旨の遺言の効力(対抗要件)」です。
遺留分減殺請求権(物件)から遺留分侵害額請求権(債権)への改正が税法に与える影響についても研修を受けましたが、
遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権への改正については、別の機会に記事にしようと思います。
さて、話を元に戻して、「相続させる旨の遺言の効力(対抗要件)」についてです。
遺産分割協議書や遺言書が無くても、相続登記ができる
不動産の相続登記を司法書士に依頼すると、遺産分割協議書か遺言書を見せて欲しいと言われます。
そのため、不動産の相続登記では、遺産分割協議書か遺言書が無いと登記できないものとばかり思っていました。
ところが、法務局で不動産の相続登記をする際、遺産分割協議書もしくは遺言書の提出は必須では無いのです。
相続登記する際に、法定相続分の持分で、遺言書の存在を無視して相続登記することができます。
≪例題≫
・被相続人甲の相続が開始。
・相続人は長男Aと次男Bの2人(法定相続分は2分の1ずつ)。
・遺言書の内容…X土地のすべてを長男Aに相続させる。
・次男Bは遺言書の存在を無視して、自己の法定相続分の2分の1について相続登記を実施。
上記の≪例題≫で、遺言書が存在し、X土地のすべてを長男Aに相続させると書いてあったとしても、
法定相続分(長男Aと次男Bのそれぞれ2分の1ずつ)の共有持分で、相続登記をすることができます。
次男Bが遺言書の存在を無視して相続登記をすることは、以前から可能でした。
問題は、次男Bが法定相続分でX土地を相続登記し、すぐに第三者Pに次男Bの持分2分の1を売却してしまった場合です。
民法改正前は、土地を取り戻すことはできたが
民法改正前なら、第三者Pに売却されたX土地の持分2分の1について、長男Aは遺言書に従って取り戻すことができました。
しかし、2019年7月以降の相続開始から、登記・登録その他の対抗要件を備えてなければ、長男Aは第三者Pに対抗することができないと定められました。
つまり、X土地は長男Aと第三者Pの持分2分の1ずつになってしまうのです。
これは、遺言書で「X土地のすべてを長男Aに相続させる。」と書いてあったとしても、第三者に売却された持分については、取戻すことはできません。
となると、土地の相続登記は、早い者勝ちになってしまうのでしょうか。
一般的に、共有になっている土地の持分について、買い手を探すのは困難です。
そのため、早い者勝ちで相続登記して、第三者に売却しようと考える人はほとんどいないと思います。
しかし、想定外のことが起こることも頭の中に入れておく必要があります。
土地は小規模宅地等の特例が適用できるかどうかで相続税額に影響しますので、早い者勝ちだと言われても、慎重に判定したいものです。
税理士にとっても、頭が痛い民法改正になりました。
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