海外の不動産(タイムシェア)や銀行口座も相続財産
税理士 平林夕佳
亡くなった人のすべての財産を相続税の対象として計算します。すべての財産には、海外にあるものも入るのでしょうか?
国立西洋美術館(上野)のハプスブルク展、開催期間が2020年1月26日まででしたので、慌てて行ってきました。
相続税がかかる財産、海外にある不動産やタイムシェアの所有権も入る
被相続人(亡くなった方)は、亡くなった時点で持っていた全ての財産が相続税の申告の対象となります。「国内外を問わず、被相続人が持っていた全部の財産が相続税の対象」です。
「おばあちゃんが、どうやら海外に不動産を持っていたみたいです。」という話は、最近は珍しくなくなりました。不動産だけでなく、海外の銀行で口座を開いていて、残高が残っていたら、それも相続財産にカウントして申告の対象となります。
日本にある財産だけ申告すればよい、ということではないことに注意が必要です。
海外に不動産を持つことが身近になったのかなと感じることに、「タイムシェア」という市場があります。
私も10年ほど前に初めて知ったのですが、ハワイにあるコンドミニアムを複数人で購入し、持分に応じて週単位で利用する利用権のようなものです。タイムシェアの所有権を売る業者がいて、ハワイ好きの方には、利用したい期間の分だけ所有権を購入できることが魅力のようです。
ハワイにあるコンドミニアムのタイムシェアは、ゴルフの会員権のようなものに似ていますが、自分が支払った持分に応じて不動産登記をするので、何割かの不動産所有権が発生します。このタイムシェアの不動産も、相続税のかかる財産に入ります。
相続税がかかる財産、海外の預金の口座にも
銀行口座を海外で開設する機会は少ないと思いますが、海外で働いていた人、駐在の経験がある方は、帰国の際に銀行口座を解約しないでそのままになっていることがあると思います。
近年では、節税のために香港やシンガポールに口座を作る方もいるようで、以前ネットで「香港に銀行口座を作りに行くツアー」というものを見たことがありました。銀行口座を作るために香港へ行くというのが不思議でしたが、投資家の方を対象としているようでした。
相続税がかかる財産、直前に引き出した現金や、貸金庫の中身も入る
相続税申告に必要な資料の話をしているとき、現金も相続財産に入ることを説明します。現金とは、タンス預金や財布の中身、貯金箱の中にあるもののほか、貸金庫の中に入っている現金も相続税の申告の対象になります。
貸金庫の中は見落としてしまいがちですので、必ず鍵を開けて中を確認しましょう。
そして、亡くなった方が長期間入院していたときなど、万が一に備えて亡くなる直前に現金を引き出すことがあります。
多額の現金を引き出した理由は、「葬儀費用を払うために、数百万円引き出した。」という方が多いです。つまり、亡くなる前は現金として存在していたので、亡くなる直前に引き出した現金は相続財産に入れることとなります。
葬儀費用として遣ったということでしたら、相続税がかかる財産から葬儀費用を引くことができますので、結局のところ、亡くなる直前に引き出した現金は葬儀費用と相殺されることになります。
★まとめ★
相続財産にカウントする財産は、海外にある不動産やタイムシェアの所有権も入ります。
銀行口座で海外で開設したものがある場合、その預金残高も相続財産に入ります。
相続人が亡くなった方の財産をすべて把握しているケースは少ないです。
万が一の時に備えて、財産の一覧を作ることも大切です。