名義預金も、マイナンバーで繋がってしまう

税理士 平林夕佳

「相続対策」という言葉を、信託銀行や保険会社の前を通ると必ずといっていいほど見るようになりました。ただし、情報不足の状態で我流で始めた「相続対策」は、破滅に繋がる可能性もあります。

 

 

関西の方から素敵なお菓子を頂きました。~大阪花ラング~

 

相続対策の名義預金は、マイナンバーで繋がってしまう

相続税を節税したい、相続が発生したときに備えて財産を減らしておきたい、子や孫に少しでも多く残しておきたい、という気持ちでかなりの金額を子や孫名義の預金通帳にお金を入れるケースがあります。

孫に預金通帳を預けてしまうと、すぐに使ってしまったり預金通帳を紛失してしまう心配から、預金通帳を口座名義人に渡さず、ご自分で印鑑も一緒に管理される方もいます。

預金通帳を子や孫名義で作って、そこにお金を移している場合、その預金通帳のことを「名義預金」といいます。名義預金とは、預金通帳の名義人のものではなく、実質的にはお金を移している人、つまり将来、被相続人となる方のものの預金ということです。

税金を誰に課税するかの判定は、実質課税の原則により、形式(預金の名義人)ではなく実質(預金通帳に入金している人)で課税するため、名義預金は実質的には被相続人の財産であると判定します。

これを知らずに、名義預金は子や孫の名義だから申告しなくていいのかと思って申告しないと、税務署から税務調査の連絡が来る可能性があります。

預金については、マイナンバーの導入により預金通帳と個人が繋がり、バラバラの資料が「名寄せ」しやすくなったようです。どこからお金が入り、それがどこへ行ったのか、お金の流れをひも付けるのにマイナンバーの導入が役に立つのではないか、という記事を2020年1月1日の記事でご紹介しました。(『税務署は3年泳がせる。」飯田真弓著~アフィリエイト、せどりも見られてる~』2020年1月1日 投稿)

 

子や孫へ預金を移したいときは、贈与契約書を交わして贈与する

名義預金の問題点は、子や孫名義の預金通帳を作成し、贈与契約書を交わさずに現金を名義預金の通帳に移すことが問題なのです。

そのため、もし子や孫に預金を移して節税対策をしたい場合、贈与が有効です。

その年の1月1日から12月31日までの間の1年間で、110万円までの贈与でしたら、税金はかからないのです。そして贈与税の申告をする必要もありません。しかし税金がかからなくても、「贈与契約書」を交わしましょう。

贈与契約書を交わすことで、税務調査が入ったときに「この預金の移動は、贈与契約書に基づいてます」ということを証明できます。

ネットで検索すると「111万円贈与して、贈与税申告と1,000円の納税をしておけば、贈与契約書を交わさなくても贈与だと証明できる」と書いている記事を見ることがあります。金融機関の人からも「111万円贈与すればいいですよね?」と質問されたことがありました。

しかし、贈与税申告書の存在だけでは贈与として認められないこともありますので、やはり贈与者と受贈者の署名・押印がある贈与契約書を交わすことをお勧めします( 111万円の贈与が「完璧」ではないワケ~贈与税申告書は贈与契約書の代わりにならない~ 2020年1月17日 投稿に、税務申告書だけだと弱い理由を書きました)。

 

子や孫へ現金や預金を贈与するときの注意点

子や孫へ現金や預金を贈与することで相続税の節税対策をされている方で、土地をお持ちの方は注意が必要です。

都心だと土地の相続税評価額が高額になるので、現金や預金を移しても思うように相続税が下がらない場合があります。

さらに相続発生となった場合、相続財産の分け方で争いが予想されます。この時に、土地の時価と同じくらいの現金や預金があれば、相続人の間でも財産が分けやすく争いになる可能性が低くなります。

しかし、土地の時価に比べて現金や預金が少ない場合、相続人は皆、土地が欲しいと言い出すでしょう。土地は分けるのが難しい財産ですので、相続人間で争う原因となってしまいます。

節税対策として子や孫に預金を贈与するのは合法ですが、万が一相続が発生しても揉めないように、遺言書を書いたり、生命保険をうまく使うのも一つの方法です。

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